パブリックコメント(4)

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なかむら ともえ
高等学校就学支援金の支給について朝鮮学校補助金について再開して頂くコメントをさせて頂きました。
民主党政府の時から朝鮮学校補助金には検討がされていましたが、それが中途のまま政権が交代してしまい、先般12月28日に新政権において文科省は高校授業料無償化の朝鮮学校への適用については「適用しない」と発表されました。
その理由について、「北朝鮮による拉致問題の進展がない事」、「国民の理解が得られない」とのご判断がありました。
私も補助金再開には賛成で少なからず支援させて頂いておりますが、在日朝鮮人の方から見聞きして知る限りでは、教育に至っては、日本の文化、朝鮮の民族文化、また英語教育など多岐にわたっており、きちんと日本の学校で教える教育と同じ事を教えています。
また大阪ではキムジョンイル首席の写真を学校の部屋から下ろしたら検討するという話しでしたが、写真をすでにおろしているのにもかかわらず検討についての進展がないようです。
いくら朝鮮学校朝鮮総連と関係があるといっても、在日朝鮮人の子供達は日本で生まれ育っています。北朝鮮の右よりの教育というより、日本で生きて聞くために必要な民主的な教育を受けているといえると思うので、「拉致問題」とは直接関わりがないと思います。朝鮮総連との関わりは親戚に会うためや学校の修学旅行で北朝鮮渡航するための手続き上のため、(日本の在外領事館と同じ役割)また、朝鮮民族教育、文化教育について日本では知り得ない事をサポートするため、と考えられ、キムジョンイル思想を教えるものではないと考えます。
記者会見で「民族差別ではない」とのコメントがありましたが、(韓国系学校も含め)他の外国人学校には補助金が下りるのに、国交が正常でないという理由だけで、朝鮮人の学校だけは補助金が下りず、親御さん生徒さんが苦労して遠く迄通われて、高い授業料も負担しないといけないのは明らかに差別的と感じます。
「国民の理解」についても、北朝鮮の報道に頼る事なく、在日朝鮮人の問題は特別永住許可証をもっている、日本における一市民として考えて頂き、事実を報道した上で国民に問いかけて頂き、「理解されるかどうか」一方的に決めるのではなく、そこから議論をして頂くのが妥当かと考えます。
文科省の方々が一度機会を見つけて実際に日本の高校に相当するかどうかをみて頂き、学校関係者、親御さんなどに話しを聞かれる事を希望します。報道の限りでは北朝鮮の右寄りの教育をしているように受け取られかねませんが、(朝鮮語を話せる事以外は)実際朝鮮高校の生徒と話しても普通の日本にどこにでもいる学生さん達だし、教室の中も映像写真等で見ましたが、日本の学校と代わりはなかったです。
ご検討法律改正よろしくお願いします。



永野 潤
 いわゆる「高校無償化」からの朝鮮学校の排除を目的とした本省令案に反対します。省令案を撤回し、朝鮮学校に対して「高校無償化」をただちに適用すべき(就学支援金を、凍結されている卒業生への分も含めてただちに支給すべき)と考えます。
 ただし、朝鮮学校に「高校無償化」が適用されるべきなのは、朝鮮学校が日本社会にとって「無害な」存在である【から】、とか「むしろ有益な存在である」【から】というような理由では決してありません。それがなされていないことが、人権侵害であり、差別である【から】、という唯一の理由にもとづいてです。
 朝鮮学校に「高校無償化」を適用しないのは、朝鮮学校の生徒たちの教育を受ける権利の侵害であり、民族教育を受ける権利の侵害です(日本も批准している「こどもの権利条約」第30条には「種族的、宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は原住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」とあります)。
 人権侵害はやめるべきだし、その理由はそれが人権侵害だからです。それ以上の理由は存在しないし、するべきではありません。その意味で、朝鮮学校への「無償化」適用を行うかどうか、つまり「人権侵害の中止を行うかどうか」を、「判断」したり「議論する」という余地はそもそもなく、ましてやそんな「判断」や「議論」を当の人権侵害の加害者が行うなど、ありえないことでしょう。ところが現在、そのような議論が実際になされてしまっています。そこでは、「反対派」が、朝鮮学校が日本社会にとって「有害」であると告発し、「賛成派」は、逆にそれが「無害」であるとか「有益」であるとか弁護する、といった状況が生まれています。まるで朝鮮学校やその生徒たちが被告席に座らされているかのようです。しかし、被告席に座るべきものがいるとすれば、それは、朝鮮学校の「無償化」からの排除という人権侵害を行っている日本政府ではないでしょうか?
 朝鮮学校は、日本による朝鮮の植民地化の結果日本に渡らざるをえなかった朝鮮人たちが、否定された自らの言語と文化をとりもどすために作り上げたものです。日本政府は、その朝鮮学校をつぶそうとし、またその後も一条校として認可せず、助成金や税の免除において差別的な扱いを行ってきました。「高校無償化」からの排除を含めて、こうした日本政府による朝鮮学校への「加害」は、その意味で、植民地主義の暴力の継続であると言えます。
 したがって、朝鮮学校に「無償化」を適用するか否かを「判断」する資格は、日本政府にはありません。それについての「議論」も成立しえません。日本政府ができること、またするべきこととは、ただ一つ、今行われている朝鮮学校への「加害」「攻撃」を直ちに「やめる」ことです。そして、謝罪と賠償を行うことです。すべてはそれからです。



仲野 誠
 朝鮮高級学校の生徒を就学支援金支給の対象から除外しようとする今回の省令案に反対します。
 その政策が行政手続き論、人権論および社会正義などの観点から極めて大きな問題を含んでいることは既に多くの人たちが指摘しているとおりであり、論理的に破綻していると考えます。そして今回の省令案は朝鮮学校の生徒たちをこの社会から排除するばかりでなく、長期的にはそもそも日本社会のためにならないものであると考えます。
 ここでは、行政手続き上および人権侵害上以外の観点からコメントを述べさせていただきます。それは、この社会を支えていくこれからの若い人たちを育んでいくためには朝鮮学校が内包する豊かな教育力をむしろ日本の教育が学んでいく必要性があるという観点です。それは朝鮮学校に対して「恩恵的」措置を講じるべきだという主張ではなく、むしろ朝鮮学校の教育力を日本社会のひとつの「財産」として位置づけることによって日本社会の将来をつくる活力を豊かにすることができるということです。これは数量的計測が比較的難しいメリットであるために議論しづらい側面があるかもしれませんが、看過できないことであると考えます。
 たとえば、朝鮮学校を訪れた多くの日本人学生は、朝鮮学校の校内でみられる豊かな社会関係資本を目の当たりにし、自分の学校生活と比べて「うらやましい」と口にします。また朝鮮学校の美術作品に出会った多くの日本人学生たちがその表現の力にしばしば衝撃を受けるのを私は目の当たりにしてきました。高校時代に美術部に所属していたある大学生は次のように言いました。「朝鮮学校の絵を観て、いかに自分が狭い環境で面白くない絵を描いていたのかがわかりました。私が描いていたのは評価されるための絵で、それは美術ではなかったことに気づきました。子どもたちの作品を観ていると次にどんな絵がくるのかわからないドキドキ感があり、同時に羨ましさも感じました。まるで作者と会話をしたかのような充足感が得られ、自分も新しい視点で絵を描きたいと思えました」。
 別の大学生は次のように語りました。「作品を観て私は頭の中をパンチされたような感覚を抱きました。その理由は作品の圧倒的な力強さです。評価されるための絵を描いているのではなく表現したいものを表現する、というすごくシンプルで難しいことをやってのけている彼らの作品は自信に満ちていました。とても堂々と描かれているため、私は作品を“みている”というよりも、“みせつけられている”ような感覚に陥りました。私は彼らの自信に満ちた絵に圧倒され、豊かな発想力に頭の中を揺さぶられて疲れてしまったのです。それと同時にこれだけのものを表現できる彼らを羨ましく思わずにはいられませんでした。“他人の目は気にしなくてもいいんだ”と勇気づけられました」。
 様々な近代的制度が機能不全に陥り、この社会全体が未来を切り開くことを手探りで模索している現状において、戦後試行錯誤しながら独自の教育を構築し、不確実性を生きる知恵や技を蓄積してきた朝鮮学校の教育から日本社会が得られるヒントはたくさんあると考えます。このような状況下、まさに私たちの「共生」の思想(あるいは排除の思想)が根源的に問われています。そこで問われているのは、朝鮮学校の生徒たちをもこの社会を担っていく成員として位置づけて、この社会の未来を共に構築することができるかどうかという日本人側の思想です。
 朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)の国家をめぐる課題と朝鮮学校の子どもたちを結び付けて考えようとする今回の省令案は理不尽であることは明らかです。それは朝鮮学校の生徒たちをこの社会から排除するばかりでなく、この社会自体の将来の可能性をも縮減する/奪っていくものに他なりません。他者に配慮ある社会をつくることは、「マイノリティ」のみならず、この社会のすべての成員の新たな可能性を生み出す根幹になるはずです。
 以上の理由から、朝鮮高級学校の生徒を就学支援金支給の対象から除外することは、日本社会にとっても不適切であり、速やかに支援金を支給することを求めます。



三宅 晶子
朝鮮学校を高校無償化制度から排除することに反対します。
2010年3月、国連人種差別撤廃委員会は、人種差別撤廃条約の実施状況をまとめた日本政府報告(第3回〜6回)への総括所見で、朝鮮学校を高校無償化の対象から除外する動きについて懸念を表明したうえで、日本国籍をもたない子どもたちの教育の機会に関する法規定に差別がないようにすること、義務教育において子どもたちがいかなる妨害も受けることがないようにすること、外国人のための学校制度などについて調査を実施すること、自分たちの言葉で授業を受けられるような機会の提供を検討することを勧告し、さらには、ユネスコ教育差別禁止条約への加入の検討を求めました。
また、続く6月の子どもの権利委員会の総括所見でも、「外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する。締約国は、ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討するよう奨励される」との勧告がなされています。しかし今、政府は、これらの勧告が求めたのとは真逆の方向に決定的に動こうとしています。
この排除には、主に3つの問題点があると思います。まず第1に、子どもたちの教育を受ける権利の侵害という観点です。母語を学び、ルーツとなる国の文化・歴史を学ぶ権利を子どもたちは有しています。今回のやり方は、単に学習権の侵害というだけでなく、教育を成り立たせる基盤である<人間の尊厳>そのものを深く傷つけることが深く憂慮されます。二つ目は、日本人に対する影響という観点です。この差別がまさに国によって公的に、それも教育の場で行われたことは、反教育ともいうべき行為となってしまい、日本人やそれ以外の子どもたち、そして国民に対して、差別してもいいと教えるプロパガンダを実行しているに等しいのではないでしょうか。現実に、国が行った差別を準用する形で、重要な自治体が、これまで続けてきた補助金を停止し、学校の存続そのものを危機に陥らせています。ここには、あらゆる子どもに自民族の言語、歴史、文化を学ぶ権利があることへの根本的な無理解と、ましてや、かつて植民地支配の中で姓名、言語、文化を奪い、戦後も国籍選択権を奪った当事国として、より深い責任を負うべきことを認識しようとしない自閉的な国民意識と、拉致問題・砲撃問題で刺激された敵対的国民感情の発動が見られます。しかし、政府は、だからこそ、感情的な差別の助長ではなく、国際的な人権意識、子どもの権利条約のレベルで子どもの権利を擁護し、東アジアにおいて記憶と歴史を共有し合うことによって真に戦争を終わらせ、21世紀になっても果たされていない講和を成し遂げ、積み残されてきた責任を果たすこと、真の和解を目指すべきでしょう。この、歴史的観点が、第3の観点です。



高橋 哲哉
政府・文科省は、朝鮮学校への無償化適用については政治的判断ではなく、教育的見地から判断する旨、くり返し表明してきました。今回の適用除外の決定は、その言に反し、政治的理由を持って朝鮮学校生徒を無償化の適用から除外するもので、そもそも高校無償化法の規定に反するものです。この決定は、国連人種差別撤廃委員会からも懸念が表明されているとおり、日本政府が教育において民族差別的な政策を公然と実施することになり、朝鮮学校に学ぶ生徒たちの基本的人権を侵害するものです。日本政府が批准している児童の権利条約にも違反するこの決定を、ただちに撤回し、朝鮮学校生徒への無償化適用を実施するように強く求めます。


パブリックコメント(3)

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李 成基さん

 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、高校無償化)施行規則の規定を改正することは、下村博文文部科学相の発言からも明らかなように、朝鮮学校をこの制度から合法的に排除するための人種差別的な行為であることが明白なため、改正を強く反対する。
 下村博文文部科学相は、「朝鮮学校については、拉致問題に進展がないこと、在日本朝鮮人総連合会と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、現時点では国民の理解が得られない」ことを理由として、朝鮮学校への高校無償化を適用しないと明言した。このような理由により朝鮮学校を高校無償化から除外することは、不当であり、人種差別である。
 高校無償化は、国際情勢や政治的事象、国民の理解以前に、学生に対して当然の権利として平等に適用されなければならない。日本政府は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)を順守しなければならない国際法上の義務を負っている。高校無償化の不平等な適用は、第2条および第13条に違反し、人種差別撤廃条約が禁止する、民族的な出身に基づく「人種差別」にあたると考えられる。
 そして、高校無償化は学生個人への就学支援であり、国際情勢や政治的事象と結びつけることは適当でない。高校無償化の適用が、生徒個々人が受けられる当然の権利であるということを、国民に理解が得られるよう、日本政府がしっかりと説明すべきである。
 高校無償化施行規則の規定改正を撤回し、速やかに高校無償化を対象となる全ての学生達へ適用することを、強く強く要求する。



佐野通夫さん

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に反対する。

そもそも、この省令は、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律に基づいて作られねばならない。
同法は、その(目的)で「第一条  この法律は、公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに、公立高等学校以外の高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとすることにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする」と定めている。第二条で「専修学校及び各種学校」について、「文部科学省令で定めるもの」という限定が付されているが、第一条の趣旨からして、その対象を限定的に制限することは許されないといえよう。
その意味では、現行のイ、ロ、ハに区分する必要もなく、すべてが現行ハ項の「高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したもの」で十分なはずである(当該課程の主な就学者の年齢等を考慮すれば足りるので、当該外国の学校教育制度においての位置付け等は不要である)。
現に改正案に「※現時点で、(ハ)の規定に基づく指定を受けている外国人学校については、当分の間、就学支援金制度の対象とする旨の経過措置を設ける」と記されていることは、ハ項でなければ、同法に対処できないことを示しており、ハ項を削除することは、今後、設置されるであろう学校についても対処できなくなることを意味する。
イ、ロ、ハに区分することは不当であるとしても、ハ項によって、すべて対象とされうる状態であったので、この省令の正当性が保たれているとしたら、そのハ項の削除は許されないことである。



坂元ひろ子さん

 私は自身、昨年11月、文科省・政府への「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用を求める要請行動に参加しました。それ以前にも3度、参加しています。文科省のかたがたは、そのたびに、政治的な理由で差別をするということを文科省では考えない、と言われ続けてきました。けれどもトップ・レベルの「政治判断」で遅れてしまっている、朝鮮高校への審査を継続している、といった説明をし続けてきました。そのあげくに、政権が変わって、下村博文文部科学大臣が「朝鮮学校については、拉致問題の進展がないこと、人事や財政面で朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、現時点の指定は国民の理解が得られないので、不指定の方向で検討」、「子どもには罪はなく民族差別をするわけではないが、拉致問題や国交回復という一定の問題が解決された後に考えるべき問題」との考えを示すに到りました。そのためだとしか思えないのが、このたびの省令改訂案((ハ)項削除案)です。
すると、政治的理由によって教育面で差別をする、ということに文科省は方針転換されたということでしょうか。それは、昨年、政府が国際人権規約の中等・高等教育の漸進的無償化条項の留保を撤回したことをも再度、撤回することをも意味するのでしょうか。「子どもには罪はなく」ということと、相反する処置としかみえません。「国民の理解が得られない」(私も国民なのですが)という理由で、たとえば学校教育での「体罰禁止」を認めず(体罰をよしとする国民や保護者も少なからずいるようです)、世界経済フォーラム発表の男女平等実現度が135カ国中、日本は101位に下がってきているという状況下にあっても(研究者の男女比においても突出していますが、最悪なのは政治家レベルでのそれです)なんら有効な策を講じることなく(男女平等実現を求めない国民も少なからずいます)、教育現場で国際人権規約に反し、人権蹂躙に至ろうとも、「国民の理解」・「政治問題」次第(恣意的な口実といわれてもやむをえないでしょうが)、という方針なのでしょうか。そんな文科省ならさっさと「仕分け事業」対象としていただくほかありません。
国籍にかかわらず、民族語による教育を受けたくて民族学校に通いたい、という納税者の子どもたちも少なくないのです。「子どもには罪はない」のはもう当然の当然として、朝鮮学校出身の学生を受け入れている国立大学の教員として、朝鮮学校(前述のように生徒の国籍はさまざまです)が朝鮮総連との関係で何かとりわけ教育上の障害になると思えたことは一度もありません。それどころか、教育面での多様性をもたらす点で寄与しています。文科省はどうやら教育の面での「グローバル化」を英語一辺倒教育化とはき違え、他方、多様性を極力、排除し、また自他ともに傷つけた戦争をめぐって被害者に到底受け入れられない歴史認識固執しようとしていますが、それは人道的、国際的な一応の合意とも相容れないものです。このようなことをしているからこそ、国際的な場面で活躍しようとしても、その「国」民は恥ずかしい思いをさせられることになっているのです。
このほどの省令改訂には反対です。今回の方針を速やかに撤回し、国際人権規約に沿って、「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用への決断をされるよう、強く強く求めます。



岡田 正則さん

 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令案」に関する意見を申し述べます。
パブリックコメントに対する意見」
 改正の内容は、上記法律2条1項5号の委任を受けてこれを具体化する同法施行規則1条1項2号の定める3つの類型のうち、(ハ)の類型を削除するものである。この改正は、次の3つの理由から違法であると解される。
 第一に、適法な委任立法であった従前の規定を、合理的理由なく(あるいは立法事実が存在しないにもかかわらず)適用対象を限定する点で、過剰な規制になる。改正後の規定は、同法の「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与すること」という目的を没却する、委任の範囲を逸脱した規定になってしまうと解される。
 第二に、改正の概要の備考として、「現時点で、(ハ)の規定に基づく指定を受けている外国人学校については、当分の間、就学支援金制度の対象とする旨の経過措置を設ける」という方針が示されているが、この改正は、法令上の基準に適合するとされた地位を当該外国人学校から剥奪するものであり、不利益処分となる。法令上の基準に適合するとみなされる地位と恩恵的な経過措置による地位とは、法律上の地位としては本質的に異なる。この点は、後者の地位がいつでも政策的に剥奪されうるという不安定なものであることをみれば、明らかである。そして、この不利益処分は、合理的な理由を欠くものであるので、違法である。
 第三に、仮にこの改正が、朝鮮学校を狙い撃ちにした改正だとすれば、それは最高裁判所判例に反する違法な改正だとみなされることになる。すなわち、最高裁判所第二小法廷平成16年12月24日判決・民集58巻9号2536頁は、一定の申請を了知した上でこれを阻止する効果をもつ条例を制定する場合、制定者は十分な協議を尽した上で申請者の地位を不当に害することのないよう配慮すべき義務を負うとし、この義務に違反して拒否処分をした場合には当該処分は違法となる旨を判示しているところ、この改正は上記最高裁判例のいう協議義務・配慮義務に反していることは明らかであるから、違法な改正だといわざるを得ないし、この改正後の規則に基づいて拒否処分を行った場合には、その処分も違法だと判断されることになる。現時点で、文部科学省朝鮮学校に対する調査さえ行っていないとのことであるから、協議義務・配慮義務以前の、申請に対応する調査義務さえも果たしていない状況にある。そうすると、この改正は、最高裁判例に照らしてみても、違法な改正といわざるをえない。なお、行政手続法39条1項によれば、意見公募手続として、関連する資料をあらかじめ公示すべきものとされているところ、上記に関する資料がまったく公示されていない点で、本意見公募手続自体が手続法上違法だとも解される。
 以上のとおりであるから、文部科学省は、この改正案を撤回し、改正方針を内閣法制局等と慎重に検討し直すべきである。拙速な改正を慎むことをお勧めする。以上。



古屋 哲さん

省令案に反対です。
朝鮮高校の生徒にも、無償化制度は適用されるべきです。
教育の権利はすべての子どもたちに保障されるべきであり、朝鮮高校の生徒も例外であってはなりません。
審査は必要でしょうが、朝鮮高校についても他の学校同様、その教育内容のみを現在の高校無償化法の基準で審査し、判断すべきです。



吉田 絵理子さん

公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関する意見
 2010年4月の無償化制度開始からすでに3年近くが経過したにもかかわらず、朝鮮学校だけが、拉致問題、砲撃事件など、生徒たちに何の関係もない理由でこれまで手続きを引き伸ばされてきました。
国籍や民族にかかわりなく、誰もが高校段階の教育を受けることができるよう、学習権を保障することを目的とするこの制度から、朝鮮学校の生徒たちのみを排除することは、国連人種差別撤廃委員会がすでに2010年3月に懸念しているように、差別にほかなりません。
 朝鮮学校の生徒たちは拉致問題にまったく責任がありません。朝鮮学校排除を目的とする省令改訂は、憲法や国際人権法に明らかに違反しますが、それだけでなく、日本の社会をふるさととして働いて生きていこうとする青年たちの心を傷つけるものです。
省令を変えようとするやり方だけでなく、パブリックコメントというやり方自体も卑劣だと思いますが、日本の社会がよりましであるために、敢えて意見表明をする1人になることにしました。
朝鮮学校を無償化の対象からはずすことに断固反対します。



落合 知子さん

改正案に反対いたします。
 海外における日本語教育、日本における外国人児童生徒への教育問題を研究する者として、朝鮮学校への就学支援金の支給を直ちに現行の法定の手続きに従って行うべきと考えております。
 多くの教育学者は外国にルーツを持つ少数派の子どもたちへの母語支援、母文化に係る教育支援の重要性を指摘しています(例えば、ジム・カミンズ、J・バンクス、中島和子、梶田正巳など)。梶田(1997)は外国人の子どもへの教育対応の土台に「アイデンティティの支援」を挙げ、その重要性を指摘しています。外国にルーツを持つ子どもたちへのアイデンティティ支援を公立学校の枠の中で行えないのであれば、民族学校の存在は大変に重要であると考えます。特に日本の朝鮮学校の2言語によるイマ―ジョン教育は4世代にわたってその継承語の維持、バイリンガルの輩出に成功している稀有な例として考えられており(中島2010)、長きにわたる朝鮮・韓国学校の言語教育実践は世界に誇る言語資源として評価されてしかるべきではありませんか。
 また朝鮮学校への就学支援金不支給の理由が朝鮮学校に通う子供たちの先祖の出身国である北朝鮮日本国政府の外交上の問題に求められていますが、外交上の問題は外交の場で解決すべきであり、日本国内で育ちゆくわれわれ社会の子どもたちの教育権を侵害することによって解決は図れないでしょうし、そのような試みは正義に反します。
 太平洋戦争中、日本からの移民の1世2世はアメリカにおいて財産を奪われ、強制収容所に入れられましたが、その後、補償と大統領による公式謝罪が行われました。またその後アメリカの教育の場で「日系人学習」という教育カリキュラムが実践されています。これは強制収容された日系人を「共感的に理解」することが学習目標としてあげられ、さらに戦後の謝罪と補償のプロセスを学習し、「アメリカが戦争中の不正義をただし謝罪と補償という民主的な対応をしたことを知り、」「(生徒に)どんなときでも、憲法権利章典およびすべてのアメリカ人の市民的自由を擁護するための責任を共有していることを考えさせ、理解させる。」ことを目標としているのだといいます。
 私たちもまた、民族教育という児童の権利条約(注1)で規定された権利を侵害されようとしている朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちの権利を擁護する責任を共有すると考えます。
 世論は折に触れ傾きますが、政治が世論に流されず、正義を貫くことを期待します。第2次世界大戦後、ブラジルで起きた日系移民の勝ち組負け組の争いによって多数の死者を出した事件を受け、ブラジルでは日系人を危険な移民とし、排斥の世論が巻き起こったといいます。その折日系人排斥決議がブラジル下院で討議され50対50で賛否同数となり、下院議長に判断がゆだねられました。議長は「ブラジルは多文化の国であり特定の移民を排斥しない」と揺れる世論を収めたといいます。この時議長による正義の主張がなかったら、現在のような日本とブラジルの友好関係は築けたでしょうか。
 日朝の未来にどのような未来が広がるか、その架け橋となる子どもたちを私たちの社会が健全に育てることにかかっています。朝鮮学校を排除、排斥することに強く反対いたします。新政権の最初の仕事がマイノリティの弾圧だったというメッセージを世界に向けて発しないように、この国を愛する1市民として強くお願いいたします。
梶田正巳他1997『外国人児童・生徒と共に学ぶ学校つくり』ナカニシヤ出版
中島和子2010『マルチリンガル教育への招待-言語資源としての外国人・日本人年少者』ひつじ書房
(注1)児童の権利条約第29条第1項C「児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること」、同条約第30条「種族的、宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は原住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」



辻 知幸さん

今回,高校無償化から朝鮮学校(だけではないのかもしれないが,実質はこれが目的と考えます。)を除くという案が出ています。
 信じられません。
 北朝鮮の蛮行は絶対に許してはいけないことではあります(同様に日本の以前の行為もですが…。)。
 だからといって,日本の高校課程に当たる生徒たちの未来を奪う権利はどこにもないのです。彼らのほとんどは,少なくない差別を受けながらも日本で生きていくのでしょう。この差別には,今回の措置も入ります。
 私は,日本が先進国とは絶対に考えませんが,中にはそうだと考える人もいるでしょう。しかし,今回の措置で日本が先進国とはだれも考えることはないでしょう。先進国という意味が,世界と日本では全然異なるものとなるのでしょうね。
 私は教育機関の末端で働いていますが,今回の措置はまったく納得がいきません。
 教育というものは政治と無関係とはいかないかもしれません。だからといって,今回の措置は行き過ぎです。
 少しでも彼らが未来を感じられるように要請します。



濱田 麻矢さん

省令の改悪に反対します。教育を受ける権利は国籍には関係ありません。また、学ぼうとする生徒たちは外交問題とは何の関係もありません。政府ぐるみが組織的な差別に加担することに絶対同意できません。



廣岡 浄進さん

 上記省令改定案に反対します。
 これは、報道されているように、朝鮮学校を狙い打ちして排除するための政策であると理解しています。巻き添えになって、朝鮮半島の南北分断を批判する立場から「本国」政府との関係を有さない、大阪府茨木市のコリア学園も、高校授業料補助金制度の対象外とされます。このことにも、反対します。そもそも在日朝鮮人は日本による朝鮮植民地支配の歴史を背負って二世三世四世と代を継いでいるのであり、日本政府は戦後その民族教育を保障すべきであったにもかかわらず、かえって弾圧してきたことが、まずもって問題であり、反省と政策転換が求められてきました。
 日本政府が加入している子どもの権利条約においても、子どもの生まれた地位にかかわらず権利が保障されるべきであり、とりわけマイノリティの子どもにおいては言語などその属する共同体の文化を尊重する教育が政府によって保障されねばならないと、うたわれています。その観点から、すでに、国連子どもの権利委員会は日本政府のこの処遇に憂慮を表明してきました。
 政府文部省は自主的な民族教育機関さえも否定してきましたが、地方行政において各種学校認可がなされ、少額ですが学校補助金も実現されてきました。
 さらに、大学進学にあたって、朝鮮学校が含まれる所の民族学校について、それまで大学入学資格検定試験の合格を要していたものを、各大学の入試要項に記載されている「高等学校卒業と同等程度以上の学力を有する」条項の適用を求める運動がなされました。小生も微力ながら関わりました。その結果、「本国政府」「国際バカロレア資格」などが一律認定される一方で朝鮮学校は個別大学の判断に委ねられたという不十分さをのこしてはいますが、大きく改善がなされました。
 今回の省令改定案はこの取組みを逆流させようとするもので、到底容認できません。政府による差別煽動に他なりませんし、実際に、この制度ができて以来、朝鮮学校への適用審査凍結という形で朝鮮学校排除がおこなわれると、小生の住まう大阪でも、その尻馬に乗って、それまでの地方自治体の補助金までも停止そして廃止という事態を招いています。つまり、新しい制度からの排除は、既存の制度からの排除までも、呼びこんでいるのです。
 近年の国際化において、在日朝鮮人が本名を名乗ることでスポーツ選手や芸能人あるいは知識人として多く活躍していることが知られ、日本社会であたりまえの状況となってきました。また韓流ブームなどの朝鮮半島との交流を支えてきたのも、民族教育をうけてきた在日朝鮮人であります。日本社会の多様性を可視化し肯定していくときに、彼らの果たしてきた役割たるや大なるものがあります。
 朝鮮人があたりまえに朝鮮人であることを認められ、かつ自ら肯定できる社会にしていくためには、政府が差別せず、のみならず差別をなくしていくための政策をとらねばなりません。
 ひとりの部落民として、そして部落問題の研究者として、最後に述べます。部落差別をはじめ、どんな差別も、孤立しては存在しません。それが日本社会において生起している以上、あらゆる差別がつながっています。
 朝鮮民主主義人民共和国の政権を仮想敵国として危機を煽り、朝鮮人の民族教育を弾圧する政策は、日本社会の底流にある人種差別をかきたてています。それは、内なる他者をあぶりだす動きとして、地震によって地殻が動くように、連動します。すでに、部落差別を煽動する雑誌報道までも出現していることは、周知の通りです。差別を許容する雰囲気が形成され、垣根、敷居が下がっているのです。その情況を、政府が先導しているのです。
 これは、世界人権宣言、国際人権規約人種差別撤廃条約などの諸条約に照らしても、政府の責任に帰すべき問題です。かかる政策は、絶対に取ってはなりません。



匿名

 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」第1条第1項第2号において定めている三つの類型のうち、(ハ)類型を削除する“改正”を行なうとして示されている、新たな省令案に対して、強く反対します。就学支援金制度の対象となる外国人学校を(イ)と(ロ)のみに限定することによってでは、たとえば朝鮮高級学校の場合、日本の高等学校の課程に相当する教育課程を有していながら、就学支援金の支給制度の対象から除外されてしまう、ということになるからです。この点を熟慮し本制度の趣旨に照らして偏りなく制度の実現を図ることが、何よりも大切だと考えます。



池田 恵理子さん

 朝鮮学校が高校無償化の対象から外されることに反対します。これは明らかな民族差別であり、重大な人権侵害です。人種差別撤廃条約国際人権規約子どもの権利条約にも反しています。下村文部科学相は「朝鮮学校への無償化適用に国民の理解が得られない」と言っていますが、これは多数決で決める類の問題でありません。日本社会に生きる子どもたちには平等に高等教育を保障すべきなのです。まして日本は朝鮮半島を植民地にした過去を顧みず、戦争責任も取ることなく現在に至っています。そのため国際社会では「戦争責任を果たせない国」として蔑まれてきました。このまま恥ずかしい国の国民でいたくありません。断固、撤回を求めます。



蔵原 清人さん

 省令改正案に反対する。
  理由
1) 日本に居住する青年が国籍や人種によらず等しく高等学校教育を受けることを保障するために、日本の学校制度によらない教育であるとしても就学支援金を支給することは当然である。
2)日本国は朝鮮民主主義人民共和国と現在国交を結んでいない状況であるが、当該国の国籍をもつ朝鮮人が日本国に居住していることは特別な歴史的経緯によることであり、国交を結んでいないことを理由に朝鮮高校生に対する就学支援金を支給を停止することは許されない。
3)日朝間に、日本人の拉致問題など懸案事項が存在することは明かであるが、それらと日本に居住するものに対する就学支援金の支給の是非とは別個の問題である。在日朝鮮人に対する就学支援金を支給することは若い世代の日本への信頼感、友好関係を高めることになり、両国間の関係改善に資するものである。就学支援金の支給を行わないことによって生じる日本に対する不信と失望を引き起こすべきではない。
4)児童の権利条約第18条第2項には、「締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するにあたりこれらの者に対して適当な援助を与えるもの」とあり、就学支援金はこの「適当な援助」に該当するものである。したがって、朝鮮高校生に対する就学支援金の支給は子どもの権利条約に照らして、日本国として国際的な義務を負っているというべきである。



小此木 喜美代さん

 朝鮮学校に高校無償化を適用することを要望します。その理由について的確に書かれた文が手元にありますので一部引用させていただきます。「朝鮮学校地方自治体から各種学校の認可を受け、教育課程・内容を公開しており、大学受験資格もあり、高体連など学校教育会でも認められている学校である」「民族的少数者がその居住国で、自らの文化を継承し、言語を使用する権利は、日本も批准する自由権規約(第7条)や子どもの権利条約(第30条)において保障されており、日本はこれを遵守する法的義務がある」「北朝鮮の国家的犯罪と、日本で生まれ今を生きる在日朝鮮人の子供たちの教育は、何の関係もない」「国際法を遵守し、多文化共生社会をめざす世界の流れをきちんと受け止めるべき」朝鮮学校は地域に根ざし開かれており、行事の際には地域の方々はもちろん、地元の政治家の方々も足を運び交流を持ち続けています。生徒や先生には韓国籍日本国籍の方たちもいます。自らの学校を親しみを込めて「ウリハッキョ」と呼び目を輝かせて学ぶ子どもたち−一日も早く「高校授業料無償化」が適用されることを強く望みます。数えきれないほどの卒業生たちは、かけがえのない市民として、今も昔も、日本社会を共に支えているのです。


パブリックコメント(2)

 届いたコメントを新しい順に掲載します。



河かおるさん

 本省令案に反対する。
 本省令案は、「公立高等学校に係る授業料の不徴収および高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」第1条第1項第2号に定めた(イ)(ロ)(ハ)の3つの類型のうち、(ハ)の規程を削除するというものである。
 下村文部科学大臣が記者会見等で述べ、報道されているところによれば、本省令案は、(ハ)を削除することにより、朝鮮学校を高校無償化の対象から除外することに目的があるという。
 以下、反対する理由を述べる。
(1)
 私は、高校無償化制度発足時まで遡って朝鮮学校に高校無償化を即刻適用(朝鮮高級学校生徒に就学支援金を支給)するべきであり、その間、就学支援金を支給してこなかったことに対して謝罪すべきであると考えている。従って、この省令案には反対である。
 朝鮮学校に高校無償化を即刻適用すべき理由は、昨年11月15日付に提出した「「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用を求める大学教職員の要請書」およびそれ以前にも提出した要請書のとおり。
(2)
 「改正の概要」によれば、現時点で(ハ)に基づき指定を受けている外国人学校については、「当分の間」、「経過措置を設ける」とされている。しかし、現時点で(ハ)に基づき申請を受理し審査中である外国人学校については言及されていない。
(2)-1
 (ハ)を削除した場合、(イ)に定めるような、ある特定の国の在外校や、(ロ)に定めるような、特定の学校評価団体の認証を受けたインターナショナル・スクール以外の外国人学校の存在を想定しないことになる。朝鮮学校以外にも
既に(ハ)によって指定されている外国人学校があるように、日本における外国人学校は(イ)や(ロ)のみで規定できるものでないことは明らかである。
 朝鮮学校は、在日朝鮮人の学校であり、(イ)の想定するような形の、朝鮮民主主義人民共和国の在外校ではない。つまり、仮に日朝の国交が樹立しても(イ)の規定に従って「大使館を通じて…確認」できる外国人学校ではない。在日朝鮮
人および朝鮮学校の存在は、他ならぬ日本が朝鮮を植民地支配したことに歴史的淵源がある。つまり朝鮮学校が(イ)には該当し得ない歴史的背景をもつ学校であることは、日本が一番よく理解しなければならないことである。
 然るに、かろうじて存在していた(ハ)項すら削除し、(イ)や(ロ)の想定する学校のみを外国人学校として扱い、朝鮮学校の存在を無視し除外することは許されない。従って、この省令案に反対である。
(2)-2
 既に指定を受けている外国人学校に対しても、根拠となる条項を削除しておきながら、「当分の間」「経過措置」などとしか示さないことが無責任であることは言うまでも無いが、朝鮮学校に関しても、既に(ハ)に基づき申請を受理し審
査中であるにもかかわらず、審査結果すら出さないまま根拠となる項目自体を削除するなどということは、およそ法治国家の所業とは言えない。従って、この省令案に反対である。
(3)
 「省令案の概要」には、「改正の概要」は書いてあるが、改正の理由や目的が書かれていない。下村大臣が記者会見等で述べ報道されたことによれば、「拉致問題に進展が無い」「国民の理解が得られない」ことを理由として、朝鮮学校
無償化の対象とする根拠となる条文を削除するのが目的であるという。
 「拉致問題に進展が無い」については、そもそも無関係であるものを勝手に関連づけているだけである。「国民の理解が得られない」については、アムネスティ・インターナショナル日本支部が発表した声明にあるように、「国民の理解」の
有無にかかわらず、履行しなければならないのが人権の保障である。
 このような「理由」がまかり通って本省令案が施行されるならば、今後、どのような人権侵害的措置も同じ「理由」によって「正当化」され得るだろう。地方自治体による補助金支給には既に波及しており深刻な問題である。さらには、例
えば同じ「理由」で朝鮮学校卒業生の大学受験資格を再び認定しないという大学が出て来ても、「正当化」されてしまうだろう。
 本省令案は、このように、あってはならない「差別の正当化」そのものであるので、反対である。



中野 敏男さん
高等学校等就学支援金制度からの朝鮮学校の排除を意図した今回の省令改正案に反対します。
高校教育の無償化を実現する就学支援金制度は、そもそも教育を受ける権利を万人に保障した民主主義の基本原理に発してすべての高校生に一律に適用されるべきもので、如何なる政治的理由によってもそれが妨げられてはなりません。それを妨げることは、日本の民主主義の根幹に関わることであり、日本が批准している子供の権利に関わる国際条約の理念にも反することで、民主主義国家の政策としてとうてい受け入れられるものではありません。
また、わたしは大学教員ですが、すでに多くの日本の大学において朝鮮学校出身者を高校教育修了者としてそのまま受け入れ、他の学生と対等に平等に教育が進められている実績があります。それなのに、朝鮮学校だけに就学支援金制度が適用されないとすれば、大学教育における平等性もその前提が否定されることになって、これは大学人としてもとうてい受け入れられるものではありません。
そのような意味を持つ省令改正案を撤回し、就学支援金制度の原点に戻って、長い間引き延ばしになっている朝鮮学校への制度適用を法律施行の当初に遡及して直ちに実施することを求めます。



大田 美和さん
省令改正案に反対します。
 私は東京朝鮮中高級学校を訪問し、授業を見学しました。文化祭にも出かけました。先生も父母も協力して子どもたちのより良い教育の場を作ろうとしている姿に接し、日本の学校朝鮮学校も同じ「学校」だと思いました。
特定のマイノリティのみを除外する省令を作ることは、21世紀のグローバル社会の重要な目標であるダイヴァーシティを認める社会の実現の努力に逆行します。日本の多くの若者(高校生、大学生)も、朝鮮学校が無償化から外されたことを「民族差別」「イジメ」として受けとめており、朝鮮学校はずしが生む弊害は、朝鮮学校の子どもたちや父母や関係者のみならず、日本人の子どもたちにも及んでいます。文部科学省や政府がイジメの先頭に立ってはなりません。
近い将来、朝鮮半島朝鮮民族をはじめとした世界中の人々が自由に行き来できる場所になった時、母語と母国に誇りを持ち、また生まれ育った日本にも愛着を持っている朝鮮学校の子どもたちは、日本をこの地域の平和交流に導いてくれるでしょう。彼らが日本社会で伸び伸びと、経済的心配なく教育を受けられることを願っています。子どもは社会の希望、未来の希望です。日本社会で学ぶすべての子どもが日本社会の将来を背負っているのです。



末永 恵子さん
日本に住むすべての青少年が教育を受ける権利を平等に保障されることを希望します。したがって、高等学校等就学支援金の支給対象から外国人学校を除外することはしないで下さい。



酒井 裕美さん

「高校無償化に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」に反対します。
この「改正」は朝鮮学校を排除するためのものであることが明白です。
もともと法律制定時、即時に朝鮮学校にも適用するべきところ、適用を渋りに渋ったあげく、
排除のための法改定を強行しようとするのは、あまりにひどいやり方です。
在日コリアンは日本社会の重要な構成員であり、その子どもたちは民族教育を受ける権利があります。
健全な国家であれば、マイノリティーの子どもたちが民族教育を受ける権利を保障しなければなりません。
在日コリアン形成の歴史的背景を考えれば、日本はより積極的にこの権利を保障するべきでしょう。
それなのに、政府がこのような政策を打ち出すことは本当に残念です。
高校無償化から朝鮮学校が意図的に排除されるとき、
それは同時に日本社会がより健全に、より豊かになっていく可能性、希望をつみとることだと思います。



黒坂 愛衣さん

 この省令案は、実質的に、いわゆる「高校無償化」から朝鮮学校を除外することを目的としたものでありますが、以下に述べる理由により、わたしは本省令案に強く抗議し、反対します。これは明らかな差別政策であり、国際的な批判、それに、将来のわれわれの子孫からの批判は免れられないでしょう。文部科学省は、この省令案に現在向けられている国内外からの批判に、真摯に耳を澄ませてください。この省令案を破棄し、すみやかに、朝鮮学校に通う子どもたちへの就学支援金の支給を開始してください。
 報道によると、下村博文文部科学大臣は先月28日、(1)北朝鮮による拉致問題の進展がない、(2)朝鮮学校朝鮮総連と密接な関係がある、といった点を挙げて、「適用は国民の理解が得られない」として、朝鮮学校の除外を決めました。
●「子どもの権利条約」30条は、「種族的・宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は原住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」としています。日本国内にいる在日朝鮮人の子どもたち、ひいては、朝鮮学校に通う子どもたちが、この30条がいう「種族的・宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者」であることは、客観的に明らかでしょう。――「子どもの権利条約」は、国際人権規約(A・B規約)で定められた諸権利等を、子どもに広げるものです。そして、1994年のB規約委員会一般的意見23「27条について」は、B規約27条にある「マイノリティ」について、「(締約国の)国民・市民であることを必要とされない」「マイノリティの存在は締約国の決定ではなく客観的基準によって確定される」としています。このB規約委員会の意見に照らせば、朝鮮学校に通う子どもたちが「子どもの権利条約」30条の対象となるのは、明らかなのです。
 日本国は「子どもの権利条約」に批准しています。日本人の子どもたちが自文化のなかで学ぶ権利を保障されているのと同様、日本国は、国内のマイノリティの子どもたち――ひいては朝鮮学校に通う子どもたちが、自文化を享受して学ぶ権利を保障しなければなりません。
 国家のこの責務は、たとえ「国交のない国」にルーツをもつ子どもたちであろうと、あるいは、たとえ「敵国」にルーツをもつ子どもたちであろうと、かわりません。国家間の政治情勢のいかんによって、子どもの権利が奪われるようなことがあってはならないことは、教育を司る省にいらっしゃる方々にとっては自明の理でありましょう。
●近年、日本国内では、朝鮮学校へむけた攻撃、在日朝鮮人にたいする攻撃がますますエスカレートしています。国は(ましてや文部科学省は)、本来であれば、このような国内に存在する民族差別を「なくす」取り組みをする責務があるはずです。それなのに、前述した下村大臣の発言(「朝鮮学校の適用は、国民の理解が得られない」)、および本省令案は、あろうことか、国内でエスカレートしている民族差別を肯定し、それをますます助長するものです。この国の教育を司る省がこのような差別政策を進めることに、わたしは、この国の政治に責任をもつ一主権者として、深い悲しみと怒りを覚えます。
 日本国が批准している「人種差別撤廃条約」第4条(c)条項は、国や地方の当局や機関が人種差別を助長、扇動することを認めない、としています。(日本国は(a)(b)条項を留保していますが、この(c)条項については留保していません。)下村大臣の発言、さらに本省令案は、明らかにこの(c)条項に違反しています。
 以上の理由から、わたしは、この省令案に強く抗議し反対します。どうぞ批判に耳を傾けてくださいますよう、お願い申し上げます。



金 鎮宇さん

 朝鮮高級学校に無償化を適用お願いいたします。拉致問題朝鮮総連など政治問題と、子供たちの健やかな育成とは別次元の問題です。
 現状では、文科省により大学受験資格を有する学校と認められながら、各種学校認可を受けていないため就学支援金の給付対象となっていないブラジル人学校等があります。大学受験においては高校同等と認められるのに、公的支援に関しては高校扱いしないというのは、明らかに法的整合性がありません。朝鮮学校に加え、これら学校を就学支援金給付対象とできるような省令改正こそ行うべきです。



高林 敏之さん

【高校無償化法施行令改正に関するパブリックコメントについて(追加論点2)】
 1月9日に2通の意見を送付した者ですが、座視できない状況が新たに出来していますので、もう1通意見を送ります。
 報道によれば、貴省は11日に発表した2013年度予算の概算要求において、朝鮮学校への就学支援金給付に備えた2億4千万円を要求から外す一方で、市区町村が幼稚園の保育料を軽減している場合に費用の一部を国が支援する補助費を上乗せする要求を行ったとのことです。
 そもそも、本件省令「改正」案に対するパブリックコメントの公募期間も終わっていないというのに、朝鮮学校除外の結論ありきの概算要求を行うとは、国民を欺き、朝鮮学校の子どもたち・保護者・教職員・運営者を愚弄するものです。このパブリックコメントは「意見を聞いた」という単なるアリバイ作りのために実施しているのですか?
 幼稚園の保育料等が高額で、保護者たちから補助金上乗せの切実な声があることは、私も保育運動に関わる父親として承知しています。
 しかし、それならば幼稚園への補助金増額も、朝鮮学校の生徒に対する(他の各種学校認可を受けた外国人学校と同様の)就学支援金給付も、ともに要求するのが文部科学省の仕事ではないですか?衆知の通り、日本の教育支出はOECD諸国中最低レベルです。教育予算全体の大幅アップを堂々と要求することが、文部科学省のなすべきことではありませんか。
 自民党は「保育園への助成が手厚すぎる」として、保育園と幼稚園との対立を煽るような言説を繰り返してきました。その自民党が政権に復帰した後のこの概算要求で、今度は朝鮮学校に幼稚園を対立させようとしています。
 本件省令「改正」案は前の意見で述べた通り、ただでさえ法的整合性がなく、国際人権諸条約の規定にも関係人権委員会の勧告にも反した、世界に恥ずべき差別法令案です。これに加えて、日本に暮らす子どもと保護者同士の「パイの取り合い」を煽ることは、子どもの健全な教育にとってマイナス以外の何物でもありません。
 子どもを分断し、政治の道具とすることは止めてください。



板垣竜太さん

 いわゆる「高校無償化」制度に関する省令の「改正」案に反対します。
 欧米を中心に広がる「イスラーム嫌悪(Islamo-phobia)」にも相似した「北朝鮮嫌悪(NorthKorea-phobia)」にともなう日本社会の排外主義的な感情を抑制する努力をするどころか、むしろ日本政府自らが朝鮮学校のみを意図的に「高校無償化」制度から排除するのは、国の主導するレイシズムとして国際的にも厳しく批判されるべきことです。実際、「高校無償化」法案が成立する直前の2010年3月に開かれた国連人種差別撤廃委員会は、「一部の政治家が朝鮮学校の排除を提案していること」に懸念を示す文書を発しました。まさにその懸念どおりのことを、日本政府自らが行おうとしているのです。
 今回の省令案は、条文の一項目を削除するものですが、これは外国人教育・民族教育をめぐる基本方針の大きな変更です。そもそも「高校無償化」制度は、いわゆる一条校に限らない様々な形態の後期中等教育に相当する教育課程に通う生徒らの就学を支援するように制度設計されています。外国人学校においては、(イ)項を通じて「本国」をもつ民族系の外国人学校を支援の対象とし、(ロ)項を通じて「本国」の有無に関係なくインターナショナル・スクールを支援する枠組を構築しています。さらに、それ以外の形態の外国人教育・民族教育の後期中等教育課程に対しても支援の対象に含め得る道を開いたのが(ハ)項でした。実際、朝鮮学校の審査は不当に滞っていたものの、この間、2つの外国人学校が(ハ)項を通じて支援対象に指定されました。(ハ)項そのものを削除することは、「本国」と日本との間に外交関係がない、またはそもそも「本国」がない民族教育は支援しない、というポリシーを日本政府が積極的に選択したことになります。これは言語・文化を中心とする(少数)民族教育を重要視する近年の国際的な動向に全く逆行するものです。
 昨年、日本政府はようやく国際人権規約の中等・高等教育の漸進的無償化条項の留保を撤回しました。その対象から朝鮮学校だけを意図的に外すことは、同じ国際人権規約で定められた民族教育の権利という観点からすれば、日本政府が新たな人権侵害を作り出したことを意味します。2010年から高校段階の年齢の子どもをもつ親の特定扶養控除が廃止されましたが、こちらの方は朝鮮学校高級部に子どもを送る親にも「平等」に適用されていることを合わせて考慮すれば、日本政府による排除の姿勢の問題性は一層鮮明になります。
 (ハ)項削除案を速やかに撤回するよう強く求めます。



浅野健一さん

 下村博文文部科学相安倍晋三首相の指示を受け2012年12月28日、朝鮮学校への高校授業料無償化を適用しないと表明した。文科省朝鮮学校への無償化適用を除外するため、省令を改定するという。この省令改定は、朝鮮学校を名指しはしていないものの、朝鮮学校を指定の対象外にすることだけを目的にした前代未聞の改悪である。
下村氏は、日本人拉致問題で進展がなく、朝鮮学校の人事や財政に在日本朝鮮人総連合会の影響が及んでいることなどを理由に挙げた。文科相は会見で「子どもには罪はなく民族差別をするわけではない」と説明した。文科相はまた、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)「国交回復」がなされれば提供対象にするとも述べた。
朝鮮学校に通う生徒たちは日本が朝鮮を植民地支配していた時に日本に渡ってきた人たちの子孫(2〜5世)で、日本に生まれ育った市民で、拉致問題に何の関係もなく、国交がないことにも何の責任もない。日朝間に国交がないのは、日本が敗戦後、朝鮮半島の北半分の政府と人民に謝罪と補償をしていないからだ。
高校無償化法は10年4月に執行された。法の施行から2年9カ月もたってから、省令をいじることができるのか。省令といえども法律であり、特定の学校、生徒を狙い撃ちした改定は、普通の国の「法の支配」に反している。
前政権は審議会で朝鮮学校を対象に含めるかどうかの審査中だという理由で、引き延ばしてきた。前政権は、政治・外交問題とは切り離して審査しているという説明をしていた。
無償化が始まってから、朝鮮学校で無償化の対象から外された卒業生は既に2回出ている。この措置で、今の3年生も無償化の対象から外れ、13年3月には3年目の卒業生になる。
生徒たちが裁判を起こす動きもあったが、文科省が審査中だということで提訴を踏みとどまってきた。今回の措置はそうした経緯を無視した人権蹂躙だ。
私の勤める大学には朝鮮高校の卒業生が多数学んでいる。大阪朝鮮高校はラグビーの第92回全国高校ラグビー大会に出場して善戦した。京都朝鮮高校も全国高校サッカー大会に出場したことがある。日本では様々な分野で高校と認められている。
私は東京で9月に開かれた在日本朝鮮青年同盟などの主催した日朝青年ドリームフェスタで、東京朝鮮高級学校の3年生の女子生徒が「どうして私たちを差別するのか。日本に生まれ日本人と仲良く暮らしたい私たちを特殊視するのか」と語っていた。当時は「適用の可否を審査中」で、これまで卒業生が2年連続で、無償化の適用のないまま卒業している。彼女は3年目の卒業生になる。
東京朝鮮高級学校3年生の女子生徒は周囲から「補助を受けたいなら日本の高校へ移ればいいではないか」ともよく言われるという。元生徒の男性は「11年3月に卒業した一番上の学年の先輩は、無償化問題で解決できないでごめんね」と後輩に言って卒業したと打ち明けた。
 私は11月、学生と一緒に京都朝鮮中高級学校の授業を見学した。その日に出会った生徒、教員は心を深く傷つけられたと思う。
 朝鮮学校には朝鮮籍の生徒のほか、韓国籍日本国籍の生徒も通っている。
下村文科相は「子どもに罪はない」「民族差別ではない」というが、朝鮮高校の生徒たちに会って話を聞いてほしい。
今回、文科相に指示を出した安倍氏は2002年9月に日朝平壌宣言の際、官房副長官として小泉純一郎首相の隣にいた。宣言を履行するよう努力する義務が安倍氏にはあるのではないか。
小泉首相は東京都内で04年5月28日から2日間東京で開かれた朝鮮総連第20回全体大会に自民党総裁として初めて祝賀メッセージを送り、在日朝鮮人の差別をなくすために努力すると述べている。佐田玄一郎筆頭副幹事長が代理出席して代読した。
朝鮮学校在日朝鮮人が民族教育、言語・文化の継承のために設立した学校で、朝鮮政府や朝鮮総連が支援してきた。国からは一円の支援もないが、大阪などを除いてほとんどの自治体が補助金を出している。小泉氏は二度目の訪朝の際、「拉致が起きたのは国交がなかったからだ」という趣旨の発言を記者団にしている。日朝関係を「敵対から友好に」「対立から協調へ」と呼び掛けた。
前政権時代に朝鮮に残る日本人遺骨問題などを契機に局長級会談が実現し、対話の機運が生まれていた。
下村文科相は「朝鮮学校への無償化適用に国民の理解が得られない」とも言っている。国民の現在のような世論は誰が創ったのか。
日本が朝鮮の人々に対し1905年から1945年まで行った加害行為を、なかったことにして、1945年から今日まで米韓と組んで朝鮮を威嚇、脅迫してきたことへの自問もない。アジアの人たちがなぜ日本の軍国主義の復活を警戒するのかに想いをはせない日本国と日本人は東アジアで孤立を深め、世界の敵になるだろう。



藤永壯さん

朝鮮高級学校生徒を「無償化」の対象から排除しようとする今回の省令案に反対します。
報道によると、下村文科相は、今回の措置について「子どもに罪はなく、民族差別でもない」と述べたそうですが、ごくシンプルに考えて、日本の学校や他の外国人学校には「無償化」を適用し、朝鮮学校のみ不適用とすることが、差別でなくて何なのでしょうか。
また下村文科相は、朝鮮民主主義人民共和国に対して、「拉致や核、ミサイルの問題を解決し国交正常化に努力してほしいというメッセージにもなる」と述べたそうですが、「無償化」は教育の機会均等を保障するための制度であり、政治・外交問題と結びつけるのは筋違いです。あえて言えば、日本政府はこの間、朝鮮船籍船舶の入港禁止や輸出入禁止などの、いわゆる「制裁」措置を取ってきましたが、こうした強硬政策が上記のような政治・外交問題の解決に全く効果がなかったことを踏まえ、むしろ朝鮮民主主義人民共和国との関係を改善する方向へ政策を転換するべきなのです。
さらに今回の省令案は、朝鮮高級学校生徒を「無償化」の対象から除外する手段として、交付のルール自体を変更しようとしているわけですから、一言で言って卑劣と言わざるをえません。大阪に住む私たちは、すでに朝鮮学校をめぐって同様の「掟破り」を経験しています。大阪市は2012年3月、大阪府の決定に追随して朝鮮学校への補助金停止方針をまず決定し、そのために補助金交付要綱を駆け込み的に改悪して、遡及的に施行しました。こうして補助金申請は前年9月に行われていたにもかかわらず、事後のルール変更で朝鮮学校に対する補助金が停止されてしまったのです。今日の日本は、中央政府地方自治体も、朝鮮学校を排除するためであれば、手段を選ばないということなのでしょうか。これでも朝鮮学校に対する差別はないと言い張るのでしょうか。
こうしたことから私は、今回の省令案が朝鮮民主主義共和国に対するメッセージとなるどころか、むしろ「朝鮮学校は差別されて当然」というメッセージを日本社会に発信する効果を生むであろうことを、深く憂慮しています。日本社会に蔓延する在日朝鮮人への差別意識に政府が「お墨付き」を与え、在日朝鮮人児童・生徒に対するより深刻な人権侵害事件が発生するかも知れない危険性を、政府はいかばかり認識しているのでしょうか。
最後に、下村文科相は朝鮮高級学校への「無償化」適用は「国民の理解が得られない」と述べたと伝えられましたが、教育の機会均等実現や民族教育の保障は、憲法その他の国内法規や国際人権法に定められ、政府として実行しなければならない義務であり、「国民の理解」を口実とする「正当化」は許されない事案です。在日朝鮮人をはじめとする在日外国人も、日本人と同等の納税の義務を果たしているのですから、当然、日本人と同等の教育を受ける権利を有しているはずです。今回の朝鮮高級学校を「無償化」から除外しようとする省令案は、それこそ「納税者の理解を得られない」改悪案にほかならないと考えます。
以上の点から、省令案に改めて強く反対し、撤回を求めます。



庄司俊作さん

安倍新政権が「高校無償化」制度を朝鮮学校に適用しないことを決定したことに関して、意見を述べます。
「高校無償化」の問題と拉致問題の解決等は、別の問題です。政府が決定した方針は、それを混同し、教育行政において旨とすべき公平さを逸脱するものであり、許されることではありません。
「高校無償化」については、日本に住む対象者すべてに等しく適用されるべきです。



匿名

この省令案は一部のマイノリティの子供たちの教育を受ける権利を制限する、差別的政策であり、認められない。
憲法にも国際人権条約にも違反している。
政治的または外交的問題と、国内の弱い立場にあるマイノリティに対する政策を結びつけて考えること自体不当である。このような国際情勢下でも、人権は保障されなければならないことを、(国民の理解が得られないことを言い訳にせず)国民に周知させる責務があるのではないか。

パブリックコメント(1)

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匿名
今回の案は、朝鮮学校の排除だけを目的とするもので、明らかに差別であり人権侵害です。国交がない国でも、日本政府が高校学校相当との判断をして適用している外国人学校があるのに、そして朝鮮学校も適用申請をずっと以前からしているのに、朝鮮学校だけ、適用を恣意的に遅らせた挙句、基準を変更するなど、手続的にも違法は明らかです。
文科省は「いじめをなくそう」などと言っていますが、これがイジメでなくて何ですか。
朝鮮学校やそこに通う子ども達、保護者が、拉致に加担しましたか。砲撃をしましたか。何の責任がありますか。本人達に責任の無い事で不利益を課するとは、重大な差別であり人権侵害ですよ。絶対に許されません。
日本人として、恥ずかしくて仕方ありません。私には愛国心がありますので、自分の国の政府がこういう差別を平然と行う劣等な政府である事実を突き付けられることは、大いに苦痛です。
改悪案には絶対反対です。

川瀬 貴也さん
 私は今回の法改正案に対して反対を表明します。
 今回の改正案は(ハ)を削除することにより、日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できる学校に在籍する生徒と、そうでない学校に在籍する生徒を差別的に扱うものですから、民族教育の権利の保障(自由権規約27条)とこれに関する平等原則(憲法14条、自由権規約2条、社会権規約2条、子どもの権利条約2条)等、各種法律や条約に違反していると考えられます。
 今回の朝鮮学校に対する(今回の法改正では他の学校の事例も想定されているかも知れませんが、具体的に見当たりませんので、ここでは朝鮮学校がその対象であると解釈します)差別的な対応で、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)との外交関係に改善をもたらそうとする意図(目的)は正当化されないと思います。そもそも教育を受ける機会の平等は、政治・外交問題等に左右されてはならないのは、言うまでもありません。なお高校無償化法案について、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置の実施等を理由に2010年から対象校にするか否かの審査が止まったままですが、その間、拉致問題、核開発に関しては何らの進展もみられず、いたずらに差別的対応を長引かせているだけと言えるでしょう。
 また、これまでも朝鮮学校の教育課程に関する情報に関する情報は、「大使館」が存在しなくても認可を受ける際に必要に応じて提出され、朝鮮学校自らが当局に対して適切に情報を提供しています。そしてほとんどの大学は朝鮮学校卒業生に入学・受験資格を認めています。
 本改正案は、特定の出自・国籍に基づく不当な差別と言わざるを得ません。また、事実上、朝鮮学校を狙い撃ちにするものであって、差別を助長・促進します。よって反対を表明します。

高林 敏之さん
【高校無償化法施行令改正に関するパブリックコメントについて】
 私は国際NGO理事を務める国際関係研究者(45歳、男性)です。本件改正案については人権侵害であることはもちろん、法的整合性を全く欠いた法治国家にあるまじき内容であり、反対します。
 このコメントでは法的整合性に関する問題点を挙げます。
1、「大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの(民族系外国人学校)」の判断
 各種の閣僚発言や報道に照らして、この規定を厳格適用することにより、「国交がなく(国家承認すらせず)大使館のない朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」)の高校相当課程と判断できない」朝鮮学校を、就学支援金の支給対象から除外する意図は明らかです。
 しかし、この理屈に拠るならば、台湾系の中華学校も適用対象から外さなければ法的整合性がとれません。
 そもそも省令本文には「大使館を通じて」という文言はありませんし、政府も説明する通り、台湾については実質的な外交代表部の機能を果たす「台北駐日経済文化代表処」を通じて中華学校の教育課程について確認できます。日台の歴史的関係に照らしても、人権の側面からも、台湾系中華学校を適用対象としていることは妥当です。
 しかし、それならば、台湾と同様の歴史的関係を日本との間に持ち、在日本朝鮮人総聯合会北朝鮮政府の政令によりパスポート発給権を持つ事実上の外交使節に指定されています)が実質的な外交代表部としての機能を果たしている北朝鮮とつながりを持つ学校(朝鮮総聯の傘下団体が運営するという意味で)も、同様に適用対象とされなければ法的整合性がありません。そもそも、わずか23か国と国交を有するのみである台湾系の学校の教育課程は確認でき、世界160カ国と国交を有する国連加盟国である北朝鮮系の学校の教育課程は確認できないという理屈は、国連の各種人権委員会で通用するものではありません。
2、現行省令(ハ)項により文科相指定を受けている学校をどうするのか
 すでに(ハ)項により就学支援金給付の対象となっている学校が2校存在します。これらについては、「当分の間、就学支援金制度の対象とする旨の経過措置を設ける」とのことなので、当該2校もいずれ、どこかの国の高校相当課程と認定されるか、欧米の学校評価団体の認定を受けることが求められるのでしょう。
 しかし、これは当該2校のひとつコリア国際学園に多大な困難を与えます。南北分断を越えた在日コリアン国際人の育成を建学精神とするこの学校に「韓国の学校」としての認定を求める道は選べず、民族アイデンティティを育むことを教育理念のひとつとする以上は欧米系インターナショナルスクールとしての認定など論外だからです。ゆえに本件改正案は、朝鮮学校排除にとどまらぬ問題を生むことになるでしょう。一度就学支援金の給付対象として認定した学校を除外することは生徒たちの人権を侵害するものであり、国内外での法的紛議を呼び起こすでしょう。
3、「少数民族」の独自教育権を認める国際人権法への違反
「2」で挙げたコリア国際学園の例は、「国家」の型枠に民族的な教育を押し込もうという本件改正案の発想の誤りを、明確に実証するものです。
 そもそも、朝鮮学校にしても本来の意義は在日朝鮮人の民族アイデンティティの維持・継承です(朝鮮学校の教科書における北朝鮮国家教育の要素が限られていることを私も自分で読み確認しています)。自由権規約第27条および児童権利条約第30条は、締約国に居住する少数民族は「自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」と定めています。これにより在日朝鮮人(日本で生まれ育ち数世代を経た市民である以上は事実上の少数民族ですし、これら国際人権条約は国籍を問わず「すべての者」「すべての児童」の権利保障を規定するものです)が自らの文化や言語を享有し継承する民族教育の権利は国際法的に保障されており、ゆえに国連の各種人権委員会から朝鮮学校の公的処遇に関する再三の是正勧告が出されているのです。
 したがって、日本政府はこれら国際人権諸条約の締約国として、それら条約が保障する「少数民族」の独自教育権保障の文脈から朝鮮学校等の子どもたちへ就学支援金支給などの公的保障を行う義務があるのです。それを、いずれかの国家や、民族性継承と無関係なインターナショナルスクールと結びつける本件改正案は、これら国際法規定に反するもので、国際的非難は免れません。
 結論として、外形的に差別と見えない形で朝鮮学校のみ排除しようという、両立しない命題を無理に法制化しようとするから、矛盾だらけの案になるのです。もはや小手先の策を弄さず、朝鮮学校を就学支援金給付対象と認めるべきです。

【高校無償化法施行令改正に関するパブリックコメントについて(追加論点)】
 本件改正案について反対の立場から、法的整合性に関するもの以外の追加の論点を挙げます。
1、文部科学大臣指定のための審査結果を待っていた朝鮮学校関係者に与える苦痛と損害
 本件改正案が成立するならば、現行省令(ハ)項による就学支援金給付対象と認められるための審査を受けるべく朝鮮学校の運営者が費やした多大な労力、また数年来「審査結果待ち」の状況に置かれてきた朝鮮学校の生徒、保護者、教職員方の心労は、すべて踏みにじられることになります。
 現行省令は国家が定めたものであり、いわば関係者に対する国家の法的な約束です。文科大臣指定のための個別審査が制度化され、かつ、専門家会議が「教育内容を問わず外形的基準(専修学校の設置基準相当の教育課程)により適用の可否を判断する」としたからこそ、明らかに専門家会議の示した基準を満たす朝鮮学校は、その法令に従って準備をしてきたのです。
 すでに審査のための書類は提出され、結果を待つのみの段階でありながら、審査プロセスの状況も明らかにされぬまま、「政権が変わったので審査そのものをなかったことにします」というのは、あまりにも無責任で、およそ法治国家にふさわしいものではありません。
 そもそも、国際人権諸条約の条文の履行に関わる法令は、締約国の政権交代により左右されることが許されないものです。それが国際社会の常識です。朝鮮学校関係者はまさに「国家の嘘」によって、精神的・物理的な苦痛と損害を負わされることになるのです。損害賠償を求める法的係争を争うために、日本国家は無益な資金とエネルギーを割くつもりでしょうか。
2、各種学校でないブラジル人学校等が支給対象と認められる省令改正こそ
 現状では、文科省により大学受験資格を有する学校と認められながら、各種学校認可を受けていないため就学支援金の給付対象となっていないブラジル人学校等があります。大学受験においては高校同等と認められるのに、公的支援に関しては高校扱いしないというのは、明らかに法的整合性がありません。朝鮮学校に加え、これら学校を就学支援金給付対象とできるような省令改正こそ行うべきです。



呉 晟佑さん
施行規則(ハ)を削除するという事で、全国に10校ある朝鮮高校に対するこの法律の適用を完全に除外するものである。
これは、同法の成立の精神を踏みにじり、日本国憲法国際人権規約人種差別撤廃条約などに抵触し、在日朝鮮人の正当な民族的権利を蹂躙するものである。
日本国政府が同法をこの様に改悪する事は絶対に許されることではない。
むしろ、過去3年間、適用を先延ばしにしてきた事を真摯に反省し、朝鮮学校関係者および支援者に誠実に謝罪する事こそ先決である。

北川 知子さん
本省令案に反対します。最大の理由は、本省令案が朝鮮学校を「無償化」制度から排除することを目的としているからです。
朝鮮学校の歴史は日本の植民地支配抜きに語れません。朝鮮・台湾からの渡日労働者は1920年代から漸増し、1940年代には日本生まれの子どもたちがいました。現在でも日系ブラジル人などの渡日労働者の子どもたちが、親よりも日本語に堪能/母国語を喪失しがちであることは珍しくありません。文科省のみなさまなら、その点はよくご存知かと思います。植民地支配から解放され、帰郷を考えた親たちがわが子の朝鮮語の能力に不安を覚え、帰郷準備の一つとして朝鮮語を学ばせる場を求めたのは、自然の成り行きでしょう。しかし折からの東アジア情勢/東西冷戦の深刻化のもと、GHQと日本政府は朝鮮学校共産主義に傾くことを恐れて弾圧、強制的に解散させました。思えばこの時代から、朝鮮学校は「朝鮮語・朝鮮の歴史を学びたい/学ばせたい」という素朴な保護者の思いに支えられる一方で、国際情勢に翻弄されていたわけです。そして日本政府は一貫して、朝鮮学校を私立学校として認可しない法体系を維持し続けており、その冷淡さの延長に「高校無償化」制度からの除外も生じたと私は考えています。そして国際情勢にせよ、日本政府の方針にせよ、それは朝鮮学校の外側の都合であり、在日朝鮮人の教育欲求をそぐことにはなりませんでした。それゆえに、幾多の困難を経ながらも朝鮮学校は再建され、今日に至ります。再建初期(1960〜70年代)、北朝鮮から財政面・教材面で支援を受けていたことは確かですが、いまはほとんど支援のない状況で資金繰りも苦しく、教員の給料遅配、校舎補修の滞りといった問題を恒常的に抱えています。通学生徒は在日コリアンの3〜5世がほとんどで、保護者も日本で生まれ育った日本の市民です。彼らは地域社会で市民としての責任(勤労や納税、地域行事への参加など)を果たしています。東北大震災、阪神淡路大震災時は、朝鮮学校も避難者を受け入れ、炊き出しを行い、地域の学校として国籍や民族に関わらず住民を支えました。この数年来、「教育内容の偏向/反日教育」といった偏見を糾すために積極的に交流、取材等を受け入れている朝鮮学校は、日本の学校よりも「開かれた学校」です。つまり朝鮮学校は正々堂々と開示努力をしているにも関わらず、少数派であり、身近に朝鮮学校に触れることができる日本人も限られているため、なかなか偏見は減らず、いわば蟷螂の斧です。その朝鮮学校とコミュニティの努力を正当に評価せず、偏見に迎合することが、民主主義国家日本のあるべき姿といえるでしょうか。
 私が非常勤講師をする大阪教育大学にも、朝鮮学校出身の学生がいます。彼らは朝鮮語と日本語のバイリンガルで、複眼的思考をもつ人材です。大阪府・市の教員採用試験に合格し、公立学校の教壇に立つ卒業生もいます。これは朝鮮学校で教育を受けた学生の能力が、日本の学校で教育を受けた学生に何ら劣らないことの証明ともいえるでしょう。もともと教育課程も教科書も、日本の学習指導要領を参照しながら作られているのですから当然です。加えて、継承語指導として、イマージョン教育/バイリンガル教育に長年取り組んできた朝鮮学校は、グローバル人材の育成/外国語教育を推進する現今日本の教育現場にとって、参照できる指導理論や指導法・教材の宝庫です。朝鮮学校を差別し排斥する文教政策と、朝鮮学校との実践交流や相互研修を取り入れる文教政策の、どちらが日本の子どもたちの学力/語学力形成に役立つか、お考えください。また「日本の学校に通えばよいのだから教育権の侵害はない」という意見がありますが、これは「マイノリティの教育権」に関する理解不足です。なぜなら、日本の学習指導要領に基づき、日本の検定教科書使用を義務付けられた日本の学校は、「(マジョリティの)日本民族教育」学校であり、マイノリティの文化や歴史を学ぶ場ではないからです。多住地域の学校で、総合的な学習の時間等を使った多文化/国際交流実践を行う学校はありますが、現場の判断と努力に負うもので、制度的に保障されているわけではありません。圧倒的な日本語モノリンガル社会である日本において、マイノリティが独自の言語文化を維持することは極めて困難です。児童の権利条約等でマイノリティの教育権について特に言及があるのも、こうした事情を踏まえているからです。朝鮮学校がもつバイリンガル教育のノウハウは、日本のなかの朝鮮学校だったからこそ蓄積できた財産であり、この財産を守ることが、国際人権規約や児童の権利条約の精神に沿うことです。
 以上、提示された省令案に反対するとともに、「高校無償化」制度からの朝鮮学校除外を直ちに改め、生徒たちに日本の高校生同様の権利を保障することを求めます。

北川 知子さん
結論:本省令案に反対します。
高等学校の無償化は、「高校・大学までの段階的な無償化」を定めた国際人権A規約(13条2項b、c)を実行するための第一歩であり、昨年9月、この「留保」撤回が閣議決定され、国連に通告されました。教育権保障の前進は喜ばしいことであり、政権与党の交代によって後退しないよう、切に願います。しかし今回の「改正」案は、私立学校認可外になっている外国人学校(国際学校含)に通学する生徒への本制度適用について定めた(イ)(ロ)(ハ)の条件から、(ハ)を削除する、明らかな後退案です。(イ)(ハ)のみ「高校無償化」制度を適用するということは、日本で暮らす、日本以外の国や地域にルーツをもつ人びとが独自にルーツを学ぶための学校/「国家」とのつながりを特に持たない学校は、すべて除外されてしまいます。マイノリティの教育権侵害を避けるはずの(ハ)条項を削除するのは言語道断です。2010年以来この(ハ)条項の指定審議の対象から朝鮮学校を除外してきた措置を追認し、さらに今後は法制度的に完全に排除する、人権侵害を宣言する「案」だともいえます。
「高校無償化」制度から朝鮮学校を排除し続けていることは、既に前述した国際人権A規約、および児童の権利条約に定められた教育権の侵害に当たります。児童の権利条約第28条第1項b「種々の形態の中等教育の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる」とあるのに、日本で生まれ育った15歳〜18歳の朝鮮学校生が「財政的援助」から除外されているのです。同じく児童の権利条約第29条第1項c「児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること」、第30条「種族的、宗教的若しくは言語的少数民族又は原住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は原住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」等のマイノリティの教育権保障を定めた条文にも違反しているといえ、現に2010年2月24日にジュネーブで行われた国連人種差別撤廃委員会日本政府報告書審査において「朝鮮学校は、税制上の扱い、資金供与、その他、不利な状況に置かれている」「すべての民族の子どもに教育を保障すべきであり、高校無償化問題で朝鮮学校をはずすなど差別的措置がなされないことを望む」といった指摘がなされています。つまり、国際的には日本が重大な人権侵害国家だと指弾されている状況にあり、そのうえこの「改正」を実行すれば、国際社会に背を向け、民主主義の実践から後退する道を日本が選択したということになります。私は日本で生まれ育った市民の一人として、日本社会の民主主義の発展に背を向け、国際社会からの孤立を招きかねない本「改正」案に断固反対です。
 2012年12月28日の閣僚懇談会の場で、下村博文文部科学大臣が「朝鮮学校については、拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、現時点の指定は国民の理解が得られないので、不指定の方向で検討したい」と提案し、安倍晋三総理大臣が「その方向でしっかり検討してほしい」と返答、その場で了承されました。しかしながら、「国民の理解が得られない」ならば得られるように努力するのが政府として成すべきことですし、拉致問題解決に進展がない原因は朝鮮総連朝鮮学校にあるのでしょうか。朝鮮学校に通う生徒を、日本の学校に通う生徒より不利な状況におくことが、拉致問題の解決に結びつくのでしょうか。下村大臣の発言は、国民が朝鮮学校の生徒を「高校無償化」制度から排除することが拉致問題の解決に「結びつく」と考えているから政府がそれに追従するのだと述べているように解せます。では、少なくない国民が放射能汚染・原発事故への不安を訴え、原子力発電に頼らないエネルギー政策の必要性を考えていることに追従しないのはなぜでしょうか。「世論/国民の理解」のありようを、そのときどきで都合よく利用する政府を、国民の一人として私は信用できません。拉致問題や「ミサイル」発射問題といった課題は外交で解決すべき課題であり、日本に暮らす高校生の教育権侵害を正当化する理由にはなりません。「国民の理解が得られない」のは、国民がこの点を混同しているからであり、政府として成すべきは混同を糾すことでしょう。政府が率先して混同し、教育権侵害に加担するなど、民主主義国家日本の政権として恥ずべきことだと考えます。

朴 卓さん
省令改正の本質は朝鮮学校を狙った露骨かつ悪質な攻撃だと解釈しています。そもそも最初から当然のごとく適用される条件を満たしていたにも関わらず、わざわざ「審査」し、その結果地方自治体の中で補助金を凍結する事態にまで発展しています。省令改正も必要なければ審査も必要なかったはずです。省令を改悪しないことはもちろん、これまで苦痛を強いてきた事への謝罪、そして2010年4月に遡って支給することを強く求めます。

今井 浩一さん
朝鮮高級学校に無償化を適用お願いいたします。拉致問題朝鮮総連など政治問題と、子供たちの健やかな育成とは別次元の問題です。
文部科学省は率先して差別をなくしてください。このままなら差別行政として両国の関係をこじらせるだけです。

吾郷 健二さん
朝鮮学校にも当然のこととして「高校無償化」を適用するべきである。
朝鮮高校とその生徒は、拉致問題には何の関連もないし、朝鮮総連
各種決定にも何の責任も有していない。
それは在日朝鮮人のための正当な教育機関であり、法に則って、
そのように認可されている。
通常の高校とは異なる措置を行なうことは民族差別であり、差別禁止国際条約にも、
国際人権規約にも反する誤った措置であり、日本人として恥ずべき行いである。
国民の一人として、日本政府の恥ずべき行為に抗議して、撤回を要求する。

米田 俊彦さん
省令改正に反対です。
(1) 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下「法」と略記する。)は、高等学校およびそれに準じる教育を受けるすべての子どもの教育費を無償にするという理念を具体化したものです。昨年9月、本法の実施をふまえて、日本政府は大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約第13条第2項(b)および(c)の適用の留保の撤回を国連に通告しましたが、この事実に本法の趣旨が如実に示されています。省令は、私立高等学校や高等学校に類する課程をもつすべての学校に学ぶ生徒に就学支援金を支給できるように、対象となる学校を漏れがないように定めています。その規定の一部を削除することは、意図的に対象から除外される子どもを作り出すこと(つまり差別)を意味します。法の趣旨にも正義にも反する行為です。
(2) 廃止を予定している省令第一条第一項第二号ハに関しては、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」が2010年11月5日に公示されています。この規程が公示された際の文部科学大臣談話では、朝鮮高級学校が本規程に基づく審査を申請することが見込まれると、具体的に朝鮮高級学校の名前を挙げつつ、「今後、この規程に基づき、審査を厳正に行い、高等学校等就学支援金制度の運用の適正を期してまいります」と述べています。この厳正な審査が継続中であることは、昨年11月、文部科学省の担当官の方から私自身が直接伺って確認したことでもあります。しかも、来年度予算案に朝鮮高級学校への支給が決定された場合の2億円が計上されていることを見ても、審査が継続中であることは明らかです。現に生きて活用されている省令の規定の廃止は、あまりにも乱暴な行政権限の濫用です。
(3) 12月28日に下村文部科学大臣が記者会見において、朝鮮高級学校を不指定にすることとした理由を述べています。拉致問題の進展がない、朝鮮総連と密接な関係にあり教育内容、人事、財政にその影響が及んでいること、の2点でした。いずれも法が成立する前から指摘されていることがらです。法の制定以後に発生した事実であって、法の趣旨実現に抵触することがらであれば、法が改正されておらずとも省令を改正する理由は立ちますが、法の制定以後に新たに発生した事実がない以上、省令を改正する正当な理由も存在しません。政権や大臣が替わったことによって、教育を受ける権利が保障されたりされなかったりするようなことはあってはなりません。

駒込 武さん
 「高校無償化」制度にかかわる省令を改悪することにより、外国人学の適用対象を狭める措置に反対します。
 もしもこうした措置が行われるとしたら、それは日本国家が1981年に批准した「難民の地位に関する条約」に抵触します。同条約は「難民」としての性格を持つ在日外国人に対して「公的扶助及び公的援助に関し、自国民に与える待遇と同一の待遇を与える 」(同条約第23条)こと、教育については「授業料その他の納付金の減免並ひに奨学金の給付に関し、できる限り有利な待遇を与えるものとし、いかなる場合にも、同一の事情の下で一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与える」(同条約第22条)ことを定めています。この条約が朝鮮籍韓国籍の人びとを対象として包含していることは、条約の批准にともなって国民年金法や児童扶養手当法などから国籍条項が撤廃され、韓国籍、さらに朝鮮籍の在日外国人にもこれらの法が適用されるようになった経緯からも明らかです。
 もしも奨励改悪により適用対象を「大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できる」学校や「国際的な学校評価団体から認定された」学校に限定したとするならば、それは外交上の関係のある国家に属する外国人に比して、「難民」的な立場にある在日外国人に「不利な待遇」を与えることを意味します。これは「難民の地位に関する条約」に明確に反する措置です。
 そもそも、特別永住者たる朝鮮籍韓国籍の外国人は、税法上は「(非永住者以外の)居住者」として「国の内外で生じたすべての所得」について日本国籍保有者と同様の納税の義務を課されているという重大な問題があります。もしも「高校無償化」の措置から朝鮮学校を除外するとしたら、朝鮮学校コリア国際学園に子どもを通わせる朝鮮籍韓国籍の保護者たちは、納税の義務を負いながら参政権を剥奪されているばかりでなく、税金を財源とする社会保障的な給付の対象からも除外されることになります。
 このような措置をとるとすれば、少なくとも、それに先だって「難民の地位に関する条約」から脱退し、日本が「難民」的地位にある外国人への差別を当然とする人種・民族差別国家であることを内外に広く宣言すべきでしょう。

井形 和正さん
国連の人種差別撤廃委員会等から、日本政府に対して、
朝鮮学校を無償化法から排除することは差別であり、是正すべき。」
という趣旨の勧告がこれまでに何度か出されています。
国連の他機関も含めて、無償化問題に対して、どのような内容の勧告を
何回受けているかお知らせください。
また、それに対してどの様な見解をお持ちか、お答えください。

吉原 ゆかりさん
高校無償化措置を朝鮮学校に適用することを求めます。

大河内 泰樹さん
その国の体制に問題があるとしてもその国民や、特に子どもに罪はありません。特定の国の学校を差別的に取り扱うことに正当性はないと考えます。
今回の省令改正は文科大臣が12月28日の記者会見ではっきり述べているとおり特定の国を標的とするものです。大臣は同会見で民族差別ではないと述べていますが、特定の国を排除することを目的として省令を改正するというのは明らかな民族差別です。本省令の改正は撤回されるべきと考えます。

大友 りおさん
いわゆる高校無償化の枠から朝鮮学校を排除することにより、いったい何が得られるのだろうか。朝鮮学校の生徒のほとんどが日本永住者であり、日本語を第一言語として話し、日本のポピュラーカルチャーに親しんで育っている若者である。無償化からの排除がこの若者たちに送るメッセージは、自分とは何かという問いと日々格闘している十代の人間にとっては、恐ろしく敵意に満ちたメッセージに違いない。日本の主流の教育が、未だに右翼思想の若者を一部に生み出すように、朝鮮学校の教育も、また様々な思想の持ち主を生む。現代日本に住む若者は、朝鮮人学校の生徒を含めて、大人たちが思うよりずっと柔軟な考え方を持ち、自分で判断するスキルを持っている。朝鮮の言語と文化を学ぶことは、日本の言語と文化の中で生活する若者にとって、自分で判断する力を高めるだけでなく、主流の日本文化を豊かにする原動力にもなるはずだ。無償化からの排除は、異文化を抹殺し、単一文化の社会を作りたいという、非常に臆病で、近視眼的な動きである。政府が国民に対して長期展望とビジョンを提示するためには、自信をもって異文化を共に学ぼうという本当の意味での強さが必要だと考える。朝鮮学校以外のいわゆるインターナショナルスクールは、経済的に豊かな日本人と、一時滞在の海外転勤者の家庭の子供たちの教育が中心で、朝鮮学校の教員が直面する現実とは異なるのであるが、それでも、国内に許容する異文化教育としてみれば、同じ構造であろう。それを排除する動きをすることは、枝葉は異なれど、北朝鮮と根を同じくした政策だとも言えるのである。

匿名
適用対象から項目(ハ)を除くことに反対します。
いま敢えてこれをはずすだけの合理的な根拠が示されていません。
適用対象は極力広く平等であるべきであり,そのために項目(ハ)を維持することが望ましいと考えます。

本橋 哲也さん
公立高等学校の「無償化」制度から朝鮮学校を除外することは、グローバルな国際化が既定の事実となった現状において、日本国民が植民地支配責任をいまだに果たしておらず、脱植民地化に努めていないと諸外国に非難されても当然の施策であると思います。またこの問題は国連の「人種差別撤廃委員会」から日本政府に勧告があったように、人種差別問題でもあります。そもそも教育や福祉、生存のような人間の基本的権利に関わる問題を「パブリックコメント」を募集して「賛否両成敗」してしまおうという姿勢そのものが、日本政府の人権感覚の欠如を示していると言われてもしかたがないのではないでしょうか。このような姿勢を内外に明らかにしてしまう愚かな施策をとらず、一律に無償化を適用することこそが、いま日本国民と日本政府に求められている賢明な態度であると考えます。

小松原 織香さん
日本で暮らす子どもたちが、生まれや国籍、ルーツに関わらず、授業料の心配なく希望の学校に進学できるように制度改正することを望み、朝鮮学校や対象から外されているブラジル人学校に、無償化を適用することを求めます。

吉田 正純さん
朝鮮高級学校等の無償化除外は、日本国も批准する国連子どもの権利条約第28条のすべての子どもの中等教育の機会の保障、および第30条のマイノリティが「自己の文化を享有する権利」を、明確に否定するものです。また日本の教育政策における、マイノリティの文化・歴史への配慮に欠けた、単一民族主義・同化主義的な傾向によって、すでに朝鮮学校を含めた民族教育は長年にわたって不利益を受けてきたことを無視するものです。そもそも教育目標・教育内容をもって無償化の基準を判断するわけではないのに、ことさらに民族学校のみの問題点をあげつらうこと自体が、不当な政治介入です。加えて朝鮮民主主義人民共和国との国際関係を理由に、子どもたちや学校・保護者への差別・排外主義的な攻撃が繰り返されていることに、政府・文科省が抗議するどころか「お墨付き」を与えることにもなります。不当な省令案(項目削除)を撤回し、即時無償化を実施することを求めます。

伊田 広行さん
授業料無償化で 朝鮮学校は対象にしないことに反対します。それは民族差別です。差別でないと言おうと、説得力はありません。客観的には差別であり集団的ないじめです。子供たちにどんな影響があるともいますか?日本人社会が差別してきたと思うでしょう。当然です。生徒個々人には責任はないが、とにかく国が悪いから連帯責任だというような発想は、教育の場であってはなりません。日本人の多数の支持が得られるから実施するという類の問題ではなく、ひとしく日本社会に生きる子どもたちに高等教育を平等に保障すべきなのです。排外主義的な対立をあおるべきではありません。庶民が個々のレベルで仲良くなり、尊敬しあい、友人になることで、不毛な政治的対立から戦争にならないような風土を作っていくべきです。

磯貝 治良さん
朝鮮高校に対する無償化適用除外に強く抗議します。
在住外国人に民族教育を保障することは、当該国政府の責務であり、国際的コンセンサスです。その権利を阻害したり、不利益を与えたりすることは許されません。ましてや政治的思惑によって差別的に判断するのは言語同断です。
経過措置をふくめて、朝鮮高校に即時、無償化を適用するよう強く求めます。

橋本 みゆきさん
パブリックコメント自体は1週間前に送ったので正確に記憶してはいませんが、趣旨だけでもお知らせしたいです)
高校無償化制度ができると知ったときは、外国人学校も対象となる点で開かれた制度を備えた国になることを、日本人である私も喜ばしく思いました。しかしその後の朝鮮学校除外過程は一転して、朝鮮学校の子どもたちや保護者を深く傷つけるものであり、同情するにあまりあるものです。これからでも改めて朝鮮学校にも教育支援金を適用してくださるよう強く望みます。

川村 肇さん
いわゆる「高校無償化」制度を朝鮮学校に適用しない方針は、あからさまな差別だと考えます。その上、子どもたちには何の責任もないのに一方的に不利益を被ることになります。こうした措置は、日本も批准している子どもの権利条約の精神にも反するもので、特に差別的な扱いを禁じている第2条に抵触します。また、国際人権規約(A規約)の中の、中等・高等教育についての無償化の漸進的導入(第13条(b)、(c))の留保については、2012年9月11日に留保の撤廃を国際連合に通告したばかりであり、政策の一貫性という観点からも整合性を欠くものであると考えます。それゆえ、この方針を撤回し、むしろ無償化の充実をこそ徹底すべきだと考えます。

パブリックコメントを送りましょう!

 報道などでご承知のことと存じますが、安倍新政権はいわゆる「高校無償化」制度を朝鮮学校に適用しない方針を決めました。12月28日に開催された閣僚懇談会で、下村博文文部科学大臣が「朝鮮学校については、拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、現時点の指定は国民の理解が得られないので、不指定の方向で検討したい」と提案したところ、安倍晋三総理大臣が「その方向でしっかり検討してほしい」と返答し、その場で了承されました。そこで政府は、野党時代の自民党議員立法で提出した法案をベースに、朝鮮学校が指定される根拠となる条文を削除する省令改悪をおこなうこととし、12月28日よりパブリックコメント意見公募手続)を募集しはじめました。
(文部科学大臣会見) http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1329446.htm

 パブリックコメントは下記のページから1月26日(土)まで募集しています。コメントの募集締切後、間もなく省令改悪をおこなう予定でいるものと考えられます。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000617&Mode=0

 どのような省令改悪が目論まれているかは、上記ページの「省令案の概要」をご覧下さい。また、このメールの末尾に《解説》として要点を掲載しておきました。

 わたしたちは民主・自民両政権の共同作業による朝鮮学校の排除に憤りを隠せません。文科省に寄せられたパブリックコメントにどれほどの効果があるのかは不明ですが、わたしたちの多様な反対の民意を、可能な限りぶつけたいと思います。下記の要領【1】で、ぜひ各自がコメントを文科省に送って下さい。

 と同時に、文科省に送付したコメントを、下記の要領【2】でわたしたちにもお寄せください。ブログ上で公開することにより、「パブリックコメント」を真に「パブリック」なものにしたいと考えています。

呼びかけ人一同
板垣竜太(同志社大学)、市野川容孝(東京大学)、鵜飼哲一橋大学)、内海愛子大阪経済法科大学)、宇野田尚哉(大阪大学)、河かおる(滋賀県立大学)、駒込武(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、高橋哲哉東京大学)、外村大(東京大学)、冨山一郎(同志社大学)、中野敏男(東京外国語大学)、藤永壮(大阪産業大学)、布袋敏博(早稲田大学)、水野直樹(京都大学)、三宅晶子(千葉大学)、米田俊彦(お茶の水女子大学

ブログ: http://d.hatena.ne.jp/mskunv/
お問い合わせ先: msk_univ@yahoogroups.jp

***************提出要領*****************

【1.まずパブリックコメント文部科学省に送ってください】

 1月26日(土)までに文部科学省に意見を送って下さい。
 提出先は下記のいずれかです。

郵送:〒100-8959 東京都千代田区霞ヶ関3-2-2
         文部科学省初等中等教育局財務課高校修学支援室宛
ファックス:03-6734-3177
電子メール: shorei@mext.go.jp
 ※メールの場合、件名を【パブリックコメントに対する意見】とする。

 盛り込むべき情報は下記のとおりです。

  • 名前
  • 性別、年齢
  • 職業(在学中の場合は「高校生」「大学生」など在学する学校段階を表記。)
  • 住所
  • 電話番号
  • 意見

※「御意見については、氏名、住所、電話番号を除いて公表されることがあります」とのことです。

【2.パブリックコメントを公表しましょう】

 文部科学省に寄せたコメントは、公表されるとしても先のことになりますし、文科省側で取捨選択される可能性もあります。それとは別に、朝鮮学校の排除に反対する声を集約し公表することは、「パブリックコメント」を真に「パブリック」なものにするためには重要なことであると考えます。

 コメントを公表しても構わない方は、下記のフォームより、文科省に送った内容をお寄せ下さい。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/10d0216c229112

 お寄せいただいたコメントは、下記ブログで公開する予定です。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/


《解説》省令案の要点

 2010年4月に制度が開始された時点では、次のような外国人学校が適用対象とされました。

このうち(ハ)については、文科省の定める審査規程にもとづき、「高等学校の課程に類する課程」を置いていると認められれば文科大臣が指定することになっていました。その審査規程が公表されたのが2010年11月でした。専修学校の設置基準相当の指定基準であったため、それにもとづいて朝鮮高級学校を審査すれば指定されることは明らかでした。ところが民主党政権下で朝鮮学校の審査は不当に引き延ばされ続け、その挙げ句に、バトンを渡された自民党新政権がこの(ハ)規定自体を削除することにしたわけです。

 なお、(ハ)規定にもとづき、これまで2つの外国人学校が指定を受けました。横浜のホライゾンジャパンインターナショナルスクールと大阪のコリア国際学園です。これらの学校については、「経過措置を設ける」と記されています。朝鮮学校をターゲットにした省令変更により、それ以外の学校にも負の影響が及ぶことになったのです。

要請書提出行動についてのご報告

 要請書提出行動について、ブログへの反映が遅くなってすみません。下記が11月19日に賛同者に送ったメールです。


 このたびは要請書に賛同いただき、あらためてお礼申し上げます。11月11日からの4日間で、796名の賛同を得ることができました。11月15日(木)に要請書と賛同者名簿を文部科学省に提出しましたので、以下、報告します。

 11月15日は、呼びかけ人のうち、関東在住の6名(鵜飼哲内海愛子、坂元ひろ子、高橋哲哉、中野敏男、米田俊彦)が文部科学省に集合しました。当初、提出は11時を予定していましたが、実際には11時をかなり回った時刻から始まりました。これはメディアの撮影許可について文科省側が手間取ったためでした。

 今回出てきたのは初等中等教育局高校教育改革PT財務課高校修学支援室長の水田功氏でした。一見穏和でしたが防御が固く、残念ながら、限られた時間で十分に情報は引き出せませんでした。「現状は先日の国会での田中大臣の答弁通りである」、「審査の現段階については他の団体に対してもそうだが今言うことはできない」、「年度が変わるごとに書類は再提出になるので審査も一からやり直しになる」、「報道などで指摘されることがあるため、法律に適っているかどうか教育および学校運営について審査する」といった説明に終始していました。また、「2010年11月5日に公表した規程および文科大臣談話は踏襲している」、「高校の課程に類する課程であることを制度的、客観的に審査している」、「国際人権規約との整合性は法制度上はもはや不備はなく、基本的に運用の問題であり、時間がかかっているだけである」といった認識を示しました。

 それに対し、原則的に適用すれば済むはずの問題が政治に振り回され、適用が遅れていることが地方自治体の補助金打ち切りに波及し、生徒・保護者にいっそうの苦境を強いていることについて見解を求めたところ、「待たせていることは申し訳ないが、補助金打ち切りは各自治体の判断であり、事態を把握はしているが文科省に直接責任があるとは考えていない」という返答がありました。また、適用の遅れ自体が子供たちにとって取り返しのつかない被差別体験であり、このことについて謝罪する必要があるのではないか、この悪循環を断ち切るには勇気が必要なのではないかという問いかけに対しては、曖昧な返答に終始していました。こちらからは再三審査の段階について、あと何が残っているのか等たずねたのですが、「審査がいつまでも続くということはない」、「すでに適用したところに対しても留意事項の確認や改善をうながす等の事後の働きかけはあり、朝鮮学校についてもたとえ適用してもそれで終わりということにはならない」というようなニュアンスの発言以上は引き出せませんでした。

 最後に、要請書の(2)にある遡及的適用については、「財政上あらためて検討する」と述べた水田氏の発言に対し、会談に立ち会っていたもうひとりの若手の職員が、「予算措置は会計年度ごとになされるので、過去の給付予定分はすでに返納されている」と発言を訂正していました。

 その後、文部科学省内で記者会見を開きました。当番社である産経の記者からは「なぜこの時期に要請行動を行うのか」という質問が、テレビ朝日の記者からは朝鮮学校における肖像画問題や教育内容に関する質問があった程度でした。あいにく衆議院解散・総選挙の話題に圧倒され、報道としては『朝鮮新報』(電子版は11月16日付)に「〈高校無償化〉日本の大学教員ら、首相、大臣らに要請書提出」との記事が出ただけでした。

 文部科学省としては、審査を政治的・意図的に遅延させているとすれば行政手続上の責任を問われるため、審査はしているが手間取っていると弁明せざるを得ない状況に置かれていると考えられます。審査規程が公表され、朝鮮学校が申請をしてから約2年、菅直人前首相が審査の再開を指示してから約1年3ヶ月も結果が出されていないこと自体、極めて異常なことです。今回、文科省は何度も「報道で指摘されることを審査している」という旨を説明していましたが、このことは、朝鮮学校に対する悪意ある報道が、審査遅延の口実を提供していることを意味しています。政治・行政・マスコミが三つ巴で制度的差別を作り出しているといえます。

 政局の如何に関わらず、わたしたちは引き続き要求を訴え続けていかなければならないと考えています。今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。

呼びかけ人一同

賛同の受付締切を少し延長しました

 今回はフォームを用いた署名のため、集約作業が比較的容易であることに鑑み、数時間だけですが署名受付の締切を延ばしました。一層の呼びかけをお願いします。
新たな締切:11月14日(水)午後6時